(レッドイーグルス北海道)GKという仕事#1 成澤優太選手
アイスホッケーのGKは、チームの「最後の砦(とりで)」。その重責を担い、日本の守護神として世界の舞台でも活躍する#39成澤優太選手に、『GKという仕事』について話を聞きました。孤独やプレッシャー、そして喜び。成澤選手の言葉から見えてきたのは、GKというポジションヘの熱い気持ちと、プロとしての責任感でした。
ーーまず最初に、成澤選手がGKというポジションを選んだ理由を教えてください。
野球を一緒にやっていた仲の良い友達に誘われて、小学3年生の時に小学校のホッケ一部に入りました。当時はプレーヤーでしたが、スケートもままならず、試合に出るチャンスはありませんでした。しかし、4年生の時にチームの先輩GKが転校することになり、他にできる選手がいなかったため、コーチから「GKになれば試合に出られるぞ」と声をかけられたのです。それまでは試合 中ずっとベンチにいたので、『とにかく試合に出たい』という気持ちが強く、GKをやることに決めました。
ーー小学校4年生でGKを始めた感想は?
始めた頃はチームにキーパーコーチがいなかったので、GKの役割だけでなく、シュートの止め方も分からないまま、無我夢中でシュートを受けていました。そんな時、ジュニアチームのコーチが僕らの小学校のコーチも兼任することになり、見かねたコーチが僕を特別にジュニアチームに入れてくれたのです。ジュニアチームではキーパーコーチやOBの方から、シュートの止め方などを教わり少しずつポジションを理解していきました。
ーーGKの魅力や楽しさを感じたのはいつ頃ですか?
ジュニアチームには各学年に3、4人GKがいて、試合に出られるのは1人、遠征に行けるのは2人だけ。試合に出たい、遠征に行きたいという気持ちで練習し、6年生でやっと試合に出られるようになりました。小学校のチームも強く、釧路市内や全道大会で優勝することができたので、GKが楽しいと感じ始めたのはその頃ですね。優勝の瞬間、GKとして立てるのは1人しかいません。そこに大きな魅力を感じます。それを知ったから、今でも続けられているのだと思います。
ーーGKとしてやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?
GKはシュートを止めるのが仕事なので、たくさんのシュートを止めて、ロースコアに抑えて勝つことがやりがいですし、そのためだけにやっています。ロースコアで勝てた時にはGKは称えられると思いますし、「GKのおかげで勝てた」と言われることは、一番嬉しい言葉です。
試合前練習のーコマ。3月16日の東北フリーブレイズ戦では、DF山田虎太朗選手のゴールのアシストも記録
——逆にGKでつらいこと、難しいと感じることはありますか?
それは多々あります。試合はもちろん、練習でゴールを決められる度に、どうすれば防げたのかと悩みます。特に試合では流れを読む必要があり、常に正解があるとは限りません。それでも、少しでも正解に近づけるように、日々練習を重ねています。イーグルスに入団して15年になりますが、悩まなかった年はありません。GKにとって勝敗は100かゼロ。どんなに多くのシュートをセーブしても、試合に負ければゼロなんです。そのため、大事な試合で負けてしまうと、とてもつらいですし、その悔しさは勝利の喜びよりも鮮明に記憶に残ります。
ーーGKは孤独なポジションだと感じますか?
僕自身は、GKはアイスホッケー以外のスポーツでも、大きな責任を伴う孤独なポジションだと思います。試合中は点差が開いてリードしていて、プレーヤーが盛り上がっていても、その後1点も入れさせられません。60分間、常に集中して戦い続けなければいけないという点でも孤独だと感じます。もちろん、みんなが助けてくれるので、あまり『孤独感』は出さないように、その思いは心に秘めています。
ーー試合中のメンタルコントロールはどのようにしていますか?
試合中は、ちょっとしたことでも気になってしまいますし、あれこれ考えすぎてしまいます。ただし、ネガティブなことを考えると、からだの動きにも影響が出てしまうので、できるだけフラットな気持ちでいるように心がけています。ミスをしても引きずることなく、気持ちは揺るがず、集中することを大切にしています。
ーー84の質問で、「キーパーって大変だぞ」とあるのはどんな部分ですか? また、小学生に戻ってポジションを選べるとしたら?
悩みごとや責任感、プレーや防具の費用が高かったりなど、いろいろな意味で「キーパ一つて大変だぞ」と思っています。もう一度、ポジションを選べるなら、絶対にFWです。これは絶対です。 GKは取り返しがつかないというか、自分で得点を取り返しに行くことができないので、得点することが仕事であるFWをやりたいです。
ーーGKを目指している子どもたちに声を掛けるとしたら?
今はGKの人数が少ないと聞いていますが、チームで教えに行く機会があるので、その際に僕たちがGKの楽しさをもっと教えてあげられればと思います。優勝の瞬間、勝利する瞬間、その場に立ち会えるGKはただ1人だけなので、その喜びを知ってほしいですし、たくさん経験してほしいです。
今シーズンは「負けから学ぶことが多く、特にメンタル面で成長できた」と語る成澤選手。その言葉からは、逆境を力に変える強い意志が感じられました
ーー成澤選手のように世界で活躍できるGKになるためには、どんなことが必要ですか?
ここまで、GKの大変さを含め正直に話してきましたが、僕自身は小さいころから今でも、『最後まで諦めなければ何かを掴むことができる』と実感しています。プレーでも諦めずに手を伸ばしているからこそ、難しいシュートを止めることができるのです。『自分にはホッケーは向かないのでは』と悩む時でも、諦めずに続けてきたからこそ今があるので、諦めない強い気持ちが必要だと 思います。悩んだり挫折することが多いポジションですが、だからこそ伸びしろがあり、年齢を重ねても長く続けられているのかもしれません。
ーー最後に今後の目標と、ワシスタントの皆さんにメッセージをお願いします。
アジアリーグはもちろん、全日本選手権、ジャパンカップで優勝することは絶対的な目標です。自分が出場していなくてももちろん嬉しいですが、やはり自分がその舞台に立って優勝することが一番の喜びです。そのためにこれからも努力し続けます。残りシーズンはわずかですが、皆さんの応援を力に変えて戦います。
【プロフィール】
成澤優太(なりさわ ゆうた)
生年月日:1987年4月14日
血液型:AB型
釧路市出身/釧路駒場小学校一釧路北中学校一釧路工業高等学校一東洋大学ー王子イーグルス
レッドイーグルス北海道公式サイト:GKという仕事#1 成澤優太選手